中国の絵文字の意味:微笑みが皮肉に、レモンが嫉妬になる理由
台湾ではたいていただの笑顔として使われる🙂が、中国のWeChatでは冷ややかな笑いの意味になることがよくあります。中国本土のネットで微笑み、レモン、お茶、スイカ、犬の絵文字が何を表すのか、それぞれの由来とあわせて紹介します。
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中国のネットには、絵を見ただけでは意味がわからない絵文字がいくつかあります。🙂は笑顔の絵なのに、中国のメッセージアプリWeChatでは冷ややかな笑いと受け取られることがよくあります。🍋、🍵、🍉、🐶はそれぞれ中国語のネットスラングを表していて、元のスラングを知らないとメッセージの意味がわかりません。2025年1月にアメリカのApp Storeで一時1位になったRedNote(小紅書)を使ってみた人や、WeChatで中国の友人とやり取りしている人なら、すでにいくつか目にしているかもしれません。この記事で紹介するのは中国本土(中国大陸)のネットでの使い方で、台湾で受け取り方が違う点にも触れます。まずは結論から:
- 🙂 微笑み:中国本土では皮肉、そっけなさ、あきれを表すことが多く、気のない「へへ」という笑いに近い感覚です。あまり親しくない相手に、これだけ送るのは避けましょう。
- 🍋 レモン:「レモンの精」、つまり嫉妬でいっぱいの人のことです。今は意味がやわらぎ、自分に向けて使うこともあります。「酸っぱくなった」は「すごくうらやましい」という意味で、好意のこもった言葉です。
- 🍵 お茶:「緑茶」の意味かもしれません。純真そうにふるまう計算高い人を指す言葉で、ほめ言葉ではなく悪口です。
- 🍉 スイカ:「瓜を食べる」、つまり騒ぎには加わらず、横から見物することです。
- 🐶 イヌの顔:独り身を自虐する「独身犬」か、「犬の頭」スタンプの代わりです。発言の最後に付けて「冗談だから本気にしないで」と伝えます。
中国では🙂が親しみを込めた笑顔とは限らない理由
理由を知るには、WeChatに最初から入っている「微笑」の顔を見るのが早道です。口角は上がっているのに、目は下を向いています。2024年に学術誌『Heliyon』に掲載された研究は、15〜18歳の中国の高校生597人を対象に、2つの実験をしています。皮肉のこもったWeChatのメッセージを書いてもらうと、いちばんよく使われたのは「微笑」と「うれし泣き」の顔でした。逆にメッセージを読んで判定してもらうと、同じ文でも「うれし泣き」の顔を付けたときより「微笑」の顔を付けたときのほうが、皮肉と受け取られる割合が有意に高くなりました。論文は先行研究を引用しつつ、この顔が皮肉やあきれを表す「謎の微笑み」に変わったと述べています。
Unicodeの🙂も見た目がよく似ていて、同じ意味に受け取られがちです。2016〜2020年の中国語のツイートを分析した2022年の研究では、簡体字で書く中国本土のユーザーは、繁体字で書く台湾のユーザーより🙂を否定的な意味で使うことが多く、🙂をいくつも続けると皮肉である可能性が高くなるとわかりました。この違いはUnicodeの名前データにも表れています。さまざまな言語の絵文字名を提供しているCLDRでは、🙂の名前が繁体字中国語では「呆呆笑」(ぼんやりした笑顔)、簡体字中国語では「呵呵」(へへ)です。当サイトの絵文字一覧も同じCLDRの名前を使っていて、日本語名は「微笑む」です。
「呵呵」という言葉も同じ道をたどりました。台湾の教育部(日本の文部科学省にあたる)の国語辞典では、呵呵はただの笑い声を表す言葉で、古典小説『紅楼夢』の一節が用例に挙がっています。ところがチャットでは、相手をするのが面倒なときの返事として使われるようになりました。2013年末には中国のSNS、微博(ウェイボー)のネット投票でその年の「いちばん傷つくチャット用語」に選ばれ、複数の新聞が報じています。中国本土のチャットでは、🙂も呵呵も🙂🙂🙂も、同じトーンで使われることがよくあります。
微笑む
中国本土のチャットでは、冷ややかな笑いや皮肉、そっけない返事の意味になりがちです。台湾では、ふつうの笑顔として使われることのほうが多いです。
微笑みの3連発
重ねるほど皮肉の色が濃くなります。だいたい「こっちはかなり我慢してるんですけど」という意味です。
へへ
文字で書いた笑い声が冷めてしまったもので、チャットでは「はいはい、どうでもいい」という意味でよく使われます。
😅:「汗をかいた大豆」の意味
中国のユーザーは😅を「流汗黄豆」(汗をかいた大豆)と呼びます。黄色くて丸い顔が大豆のようで、おでこに汗が一粒浮かんでいるからです。もともとは見たとおり、照れや気まずさを表す絵文字でした。ところが中国本土の一部の掲示板やコメント欄ではトゲのある意味を帯び、「あきれた」「もういいでしょ」という気持ちでよく使われるようになりました。遠回しな嫌味で言い争いを打ち切るときの使い方です。CLDRの簡体字中国語名は「苦笑」で、日本語の苦笑と同じ意味です。同じ顔が「あ、ごめん」にも「いいかげんにして」にもなるので、相手がふだんどちらの意味で使っているかを考えてから送りましょう。
汗かき大豆(冷や汗笑顔)
照れや気まずさを表すほか、中国本土の一部の掲示板では「もういいでしょ」という遠回しな嫌味にもなります。
🍋:「レモンの精」と「酸っぱくなった」
中国語では昔から、酸っぱさで嫉妬を表してきました。恋愛のやきもちを指す日常語の「吃醋」は、文字どおりには「酢を食べる」という意味で、辞書もその気持ちを酸っぱい味にたとえて説明しています。「柠檬精」(レモンの精)は、そのネット版です。直訳すると「レモンが化けた精霊」で、嫉妬が強くなりすぎて、ひとり歩きし始めた状態を表します。中国語の言葉を扱う雑誌『Yaowen Jiaozi』の編集部は、この言葉を2019年の流行語トップ10に選びました。編集部によると、もとは他人のやきもちをからかう言葉でしたが、しだいに意味がやわらぎ、自分に向けて使うこともあるそうです。「我酸了」(酸っぱくなった)は、実は「すごくうらやましい」、つまり「すごいね」という意味です。
ですから、新しい車や旅行の写真に友人が「我酸了🍋」とコメントしてきたら、皮肉ではなくほめ言葉です。Unicodeが定める🍋の簡体字中国語のキーワードにも、もともと「酸」(酸っぱい)が入っています。気をつけたいのは、誰に向けて使うかだけです。自分を「レモンの精」と呼べば自虐ですが、他人をそう呼ぶと、もとのトゲがまだ少し残ります。
レモン(レモンの精)
嫉妬のしるしです。自分に向ければ素直な「うらやましい」で、人に向けるとまだトゲがあります。
酸っぱくなった
友人のうれしい報告にコメントするときに使います。いい意味での「うらやましい」なので、ほめ言葉として伝わります。
🍵:「緑茶」は飲み物ではなく悪口
🍵は、ほとんどのプラットフォームで緑茶の湯飲みとして描かれています。中国のネットでは、ふつうにお茶を指すほか、「绿茶」(緑茶)の意味で使われることもあります。見た目は純粋で無害そうなのに、実は計算高く人を利用する人のことです。このレッテルは2013年に中国本土のネットで広まりました。もともと女性に向けられた言葉で、偏見を助長すると以前から批判されています。本来の言い回しには侮辱的な語も含まれているため、当サイトではその部分を省いています。2020年にはヒットしたテレビドラマをきっかけに再び流行し、微博や抖音(中国版TikTok)には「茶艺」(お茶の芸)や「茶言茶语」(お茶の言葉)といった派生語があふれました。気づかいに見せかけて、実は波風を立てるための物言いのことです。
人を品定めする悪口なので、意味がわかれば十分です。当サイトとしては、使うことはおすすめしません。あるコメントへの返信に🍵が付いていたら、返信した人はそのコメントを「純粋ぶっている」と見ているのかもしれません。英語のスラングとも混同しないでください。英語の「tea」はうわさ話のことで、「spill the tea」は「うわさを暴露する」という意味です。2つはまったく関係ありません。
湯飲み(緑茶)
「緑茶」の意味で使うと、人当たりがいいのに計算高い人、という悪口になります。意味がわかれば十分で、人に向けて使うものではありません。
🍉:「瓜を食べる」は野次馬のこと
「吃瓜」(瓜を食べる)は、横から見物することです。『Yaowen Jiaozi』は2016年の流行語トップ10に「吃瓜群众」(瓜を食べる群衆)を選び、その由来も説明しています。中国では、人のおしゃべりを聞きながら瓜子(炒った瓜の種)をかじることがよくあります。そこからネット掲示板でも、スレッドを読むだけで書き込まない人(日本でいうROM専)を「瓜の種を食べている」と言うようになりました。それを、早く打ちたい人たちが「吃瓜」に縮めたのです。今ではネットに限らず、内情を知らない人や、あえて口をはさまない傍観者を広く指します。

瓜の種の絵文字はありません。先に吃瓜のスタンプを用意したのは微博で、WeChatも2020年1月に、スイカにかぶりつく顔の[吃瓜]を追加しました。このとき追加された10個の中には、[汗]や[旺柴]もあります。ほかのアプリでは、🍉をひとつ添えるのがいちばん手軽です。「🍉 特等席で見てます」は「どうぞ続けて、見てるだけだから」という意味です。
スイカ(瓜を食べる)
「騒ぎを見物しているだけだから、どうぞ続けて」という意味です。
WeChatのコード [吃瓜]
WeChatのチャットに貼り付けると、スイカを食べる顔に変わります。角かっこは半角で入力してください。対応していないアプリでは、文字のまま表示されます。
🐶:「独身犬」と「犬の頭」
中国のネットで🐶から連想されるものは2つあります。ひとつ目は「单身狗」(独身犬)で、恋人のいない人のことです。多くは自分のことを言うときに使います。中国社会科学院言語研究所のウェブサイトに載った短い解説によると、この言葉は2011年にネットに現れ、2012年末から人を指すようになり、2014年にはその年のキャンパス流行語ランキングに入りました。中国語で人を「狗」(犬)と呼ぶのはたいてい悪口ですが、ここでは愛のあるいじりで、「加班狗」(残業犬)のように、大変な思いをしている人を指す言葉も生まれました。カップルが独り身の友人の前でいちゃつくのは「撒狗粮」(ドッグフードをまく)と言います。
ふたつ目は「犬の頭」です。日本の柴犬かぼすちゃんの写真が2010年に飼い主のブログに載り、のちにdogeのミームになりました。微博はこれを[doge]というコードのスタンプにしています。誤解されそうな発言のあとに付けると「冗談です、皮肉です、怒らないで」という意味になり、これを「狗头保命」(犬の頭で命を守る)と言います。Redditで皮肉を示す「/s」とよく似た働きです。WeChatが2020年1月に追加した[旺柴]も使い方はほぼ同じで、「冗談だよ」のつもりで送る人がたくさんいます。追加された当時は「これでもう犬の頭をいちいち打ち込まなくて済む」という声もありました。中国のニュースサイトThe Paperの2024年の分析記事は、親しい相手なら親しみが伝わる一方、よく知らない相手には嫌味と受け取られることもあると指摘しています。偶然ですが、CLDRの繁体字中国語では🐶の名前がまさに「狗頭」(犬の頭)です。
イヌの顔(犬の頭)
冗談の最後に付けると、犬の頭のスタンプと同じく「本気にしないで」という意味になります。自分のことに使えば「独身犬」、つまり恋人がいないという意味です。
微博のコード [doge]
微博の犬の頭スタンプを出すコードです。対応していないアプリでは、ただの文字のまま表示されます。
WeChatのコード [旺柴]
2020年1月にWeChatに追加された、WeChat版の犬の頭です。WeChatに貼り付けるときは、角かっこを半角にしてください。
🐟:仕事中のサボり
「摸鱼」(手探りで魚をとる)はサボるという意味で、台湾でも中国本土でも使われています。台湾の教育部の国語辞典にも載っていて、手で魚を捕まえることのほかに「仕事をまじめにせず、手を抜くこと」という意味が挙がっています。例文は「勤務時間中にサボるな!」です。中国本土では、メッセージアプリのQQが2020年12月に摸鱼を公式スタンプにしました。このスタンプがないアプリでも、🐟をひとつ添えれば同じ意味になります。「今日も🐟」は、だいたい「今日もできるだけ手を抜いてます」という意味です。
魚(サボり)
仕事中にサボることです。「今日も🐟」は、今日も適当にやり過ごしているという意味です。
台湾と中国本土で意味は同じ?
言葉はだいたい通じますが、トーンまで同じとは限りません。ここで紹介した言葉の多くは中国本土の掲示板、微博、WeChatから広まったもので、台湾のユーザーも目にします。台湾のGoogleでは「🍋 意思」「🍉 意思」(🍋 意味)といった検索候補が出ますし、「吃瓜」のあとには「台灣用語」(台湾の言葉?)が続きます。台湾の言い方なのかどうか気になる人がいるということです。違いがデータで確かめられているのは🙂だけで、先ほどのツイートの研究では、繁体字中国語を使う台湾のユーザーのほうが、否定的な意味で使うことが少ないとわかりました。
実際には、相手が簡体字で書いていて、WeChatや微博でやり取りしているなら、この記事で紹介した中国本土での意味で受け取っておくのが無難です。台湾の友人なら🙂が皮肉である可能性は低めですが、3つ続けて送られてきたら、自分の直前の発言を読み返してみましょう。親しみを誤解なく伝えたいときは、言葉ではっきり書くか、😊のように目も笑っている顔を使うのがおすすめです。🍵などの悪口は、意味がわかれば十分です。
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このページのイラストはAIで生成したもので、各プラットフォームの絵文字のデザインではありません。